

EUってなに?
EU(欧州連合)とは、ヨーロッパを政治的、経済的に1つの国のように統合する組織で、1993年のマーストリヒト条約の発効で発足しました。EUでは加盟国間での人(労働力・観光客など)、商品(もの・サービス)、お金(資本)の移動を自由にするため、共通通貨ユーロの導入や、関税の撤廃、加盟国間での移動や通関手続きの簡略化(多くの場合でパスポートの提示が不要!)などを行なっています。
EUはどうして生まれたの?
EU設立の最大の目的は、恒久的な平和を維持すること。20世紀、ヨーロッパは2度の世界大戦で国土と経済が疲弊しました。その原因の1つに、資源を巡る争いや経済的な対立がありました。これを教訓に二度と戦争が起きないように、資源開発や経済面での協力を進めることにしました。こうして1952年にヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC)が設立、やがてEEC、ECへと発展し、1993年にEUとなりました。
イギリスはどうしてEUを離脱したいの?
2016年6月、イギリスでEU離脱(プレグジット)の是非を問う国民投票が行われ、離脱賛成票がわずかに上回り、離脱することが決定しました。
イギリス国内では、以前からEUの権力が拡大して自国のことを自分たちで自由に決められなくなったことや、EUに支出する分担金が多いことへの不満がありました。さらに近年は、経済的に貧しい東ヨーロッパなどの加盟国からの移民が増加していました。この影響でイギリス人の失業率が上がり、移民に対する医療や教育にかかる費用の負担が大きくなっていました。このため、人の移動の自由を認めるEUを離脱し、移民を制限するべきだとの声が上がるようになり、離脱派の勝利に結びついたのです。
離脱したいの?したくないの?
離脱の意志を表明したものの、イギリスは何度も離脱を延期してきました。最大の難題として、アイルランドとの国境問題が立ちはだかるためです。アイルランドとイギリスは昔から一筋縄では行かない関係にありました。現在のイギリスは正式名称を「グレート・ブリテン及び北(部)アイルランド連合王国」というように、アイルランド島の北の一部も統治しています。北アイルランドと南アイルランドの間の国境では、人やモノの自由な往来が許されてきました。ところが、イギリスがEUを離脱するとその自由な渡航が厳しく制限されたり、北アイルランドとイギリス本土の間に見えない国境が立ちはだかるという問題が生じます。これをイギリス議会は「EUへの隷属状態だ」と激しく反対し離脱を難しくしているのです。

EUはこれからどうなるの?
国民投票のあと、メイ首相率いるイギリス政府とEUの離脱交渉が始まりました。離脱びは2019年3月29日でしたが、両者は離脱による急激な変化を避けるために2020年12月末までを移行期間とし、この期間はイギリスにこれまでと同様の決まりを適用することなどを決めた離脱協定案に合意しました。しかし、イギリス議会が協定案を否決し、離脱日は2019年10月31日に延期されました。メイ首相はこうした混乱の責任をとり7月に辞任、離脱に強硬な姿勢を見せるジョンソン氏が首相に就任し、10月31日に離脱できなければ「溝で野たれ死んだ方がまし」と発言するほどの意気込みでした。
ところが、イギリス議会が合意することなしに離脱するのを回避するための法律(ペン法)が可決されたため、またしても離脱は延期せざるを得なくなりました。イギリスがいつどのような形でEUを離脱するのか、また離脱するのかどうかも、現時点では不透明となっています。