【米中貿易戦争】2019年を知る⑧

貿易戦争はどうして始まったの?

貿易戦争とは国家同士が互いに関税を上乗せしあって、相手国に経済的なダメージを与えること。2017年1月に、アメリカ大統領として就任したトランプ大統領は、アメリカの利益を第一に考える「アメリカ第一主義」の政策を進めました。この政策の一環として、2018年3月にトランプ政権はアメリカ国内の鉄鋼・アルミニウム産業の保護を目的として、中国から輸入する鉄鋼・アルミニウム製品に対する関税を引き上げました。さらに中国に対して、知的財産権の侵害に対する制裁と称し、ハイテク製品などに対して、7月、8月と立て続けに関税引き上げを行いました。これに対し中国は対抗措置として、アメリカから輸入する食料品や自動車などの関税を同額分引き上げました。

 この対立によって、両国では株価の下落や経済の落ち込みが見られ、世界経済への影響も心配されています。これを打開するため、トランプ大統領と中国の習近平(しゅうきんぺい)国家主席による首脳会談が2度にわたって開かれましたが、打開策が見えず、長期化することが予想されます。

▲ 関税からみる世界の歴史

なぜアメリカは関税を引き上げたの?

 米中間の貿易では、かねてからアメリカの貿易赤字を原因とする貿易摩擦が生じていました。トランプ大統領は、この貿易赤字がアメリカの産業を衰えさせ、雇用を奪っていると考えました。この貿易の不均衡を是正することが引き上げの目的と言えます。もう一つの問題として、中国による知的財産権の侵害があります。アメリカをはじめ、外国企業が中国で事業を行う場合、その企業は中国に技術を提供するよう強制されています。アメリカはこの他にも中国が知的財産権を侵害していると指摘し、これに対する制裁として関税の引き上げを行ったと考えられています。また、中国政府による中国国有企業への補助金を改めさせる狙いもあると考えられています。

貿易摩擦:貿易によって生じる、国と国との利害対立。一方の国の貿易赤字が大きくなるなど、不均衡な貿易が行われた場合に怒る。日本とアメリカとの貿易では、自動車や半導体などで日本の大幅な貿易黒字を原因とする貿易摩擦がたびたび起こっている。

アメリカの動きは?

 トランプ大統領は就任以来、保護貿易を重視する保護主義の動きを強めています。保護貿易は、国家が輸入量を制限したり、高い関税をかけたりと制限を課す貿易で、国内産業を守るために行われます。中国が先端技術分野で台頭していることに危機感を募らせるトランプ政権は「安全保障上の理由」と称してファーウェイ(中国の大手通信機器メーカー)の製品をアメリカ国内から排除する措置を発表しました。この措置は、かつて日本メーカーがアメリカを凌駕したときに取られた措置にも酷似しています。